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執筆者の写真ヤモリ

不動産の民主化 地方中古不動産市場を創るヤモリの構想



 

株式会社ヤモリ 代表取締役 藤澤 正太郎 2011年 三菱商事株式会社入社、地球環境事インフラ事業で海外プロジェクト開発に従事。4年間のチリ駐在を経て、不動産関連事業の新規事業立ち上げ。米不動産テックユニコーン企業であるKnotelの日本代表を務める。2019年11月に株式会社ヤモリを創業。

 

次世代の社会に意義あるものを残したくて起業した

日本の未来を考えるにあたって、大きな社会の潮流は3つあり、① 人口減少・高齢化、② 経済成長の限界、③ 環境負荷の増加 である。

人口減少・高齢化の流れは特に日本において本格化している。住宅分野における影響では、空き家は増える一方で、子育て世帯や高齢者向けの住宅が不足している。


さらに、30年以上の長期にわたり日本経済は停滞を続けている。過去30年の経済成長で所得を増やしたのは一部の富裕層であり、中間層はその恩恵に預かっていない。これまでのように経済成長を前提に住宅供給を年々増やすことは難しくなり、住宅を新築で購入できる世帯数も減少している。今後はますます既存住宅をどのように活用していくかが求められている。


また、環境負荷をどのように低減すべきかも無視できない社会課題となっている。今後まだ利用できる建物を取り壊すのではなく、作っては壊すから手入れして長く使う社会への転換は避けられない。


このような社会の大きな流れの中で、生活インフラであり社会資産でもある「不動産」がどのようにあるべきか。中古物件を上手く活用していく流れは不可避であると考えており、この分野で人生を賭けて次世代の社会に意義あるものを残したいという想いでヤモリを起業した。


日本の住宅寿命は短い

海外と日本の不動産を比較すると、一番の大きな違いは「住宅寿命」である。日本の平均住宅寿命は約30年であり、欧米の100年と比較しても際立って短い。なぜここまで大きな差異があるのだろうか。


要因としては、新築を促進する税制、中古住宅市場やリフォーム市場の未成熟さ、地震リスクが高いなどが挙げられるが、一番根底にあるのは「家を買うなら新築」という国民に根付く新築志向の意識である。


木造建築であっても手入れして耐震補強し、設備を新しくすれば欧米と同様に長く使うことはできるが、解体して新築物件を建てることが好まれている。最終的には国民の住居費負担が上がることになっており、今後は住宅寿命の長期化による低コストでの住環境改善が必要になっていくだろう。



地方中古不動産市場はヒト・モノ・カネがない

未活用の中古不動産に価値を見出して、これからの成熟社会を支える生活インフラに変えることはできないだろうか。このような視点で、特に郊外や地方都市にある中古不動産を見てみると、空き家が増え続けて手付かずになってしまっている状況には理由がある。


端的に言うと「ヒト・モノ・カネ」がない。現状、中古物件のオーナーの多くが相続した個人オーナーであり、賃貸経営の知識を持って事業として取り組む個人投資家は少ない。企業や機関投資家も1件あたりの投資金額が小さく分散している市場のため参画できない。


また、古い物件の持ち主も売れるとは思っていなく、そのまま放置されてしまい老朽化・空き家化が進んでいる。中古不動産市場を活性化させるような仕組みや制度もなく物件情報が整備されていない。さらに、不動産業向け融資の出し先である地方銀行では、個人投資家、中小企業や耐用年数を超えた中古物件への融資には消極的である。



ヤモリは「中古物件✖️地方」の市場を創る

ヤモリで実現したい社会は、「中古物件の価値を引き出し、質の高い住環境を提供すること」である。そのためには、まずは知識を持った不動産個人オーナーをもっと増やさないといけない。そこで始めたのが「ヤモリの学校」と「ヤモリの家庭教師」である。購入から運営・売却まで寄り添って、それぞれの目的に合った不動産賃貸業をサポートする。ヤモリは仲介と売買で収益化するビジネスモデルは捨てて、「不動産の民主化」というミッションを掲げて、個人オーナーから直接収益を頂いて一人でも多くの知識を持ったオーナーを育成している。


2024年2月時点で会員生徒が購入した物件は合計で50億円を超えており、中古戸建・アパート・マンションを賃貸に貸し出して安定した賃料収入を得ている。初期リフォーム費用を含めた総事業費利回り(年間家賃/総事業費)は平均約20%となり、再現性の高さを数字が示している。


第一章ではヒトが育ち実績ができた。何よりも熱量の高い若年層の投資家が集まる良質なコミュニティを形成することができた。続いて第二章では、この実績を持ってベンチャーキャピタルと機関投資家から資金調達をし、更に金融機関の借入も組み合わせることで、地方中古不動産市場にカネが回る仕組みを作る。具体的には、ヤモリとして貸金業のライセンスを取得し、会員生徒向けに無担保最大15年のヤモリローンを提供開始した。更に三菱UFJ信託銀行と協業して、日本初となる空き家賃貸ファンド組成へ動き出した。ヤモリ自社でも全国の地方・郊外の中古戸建物件を購入しており、今後5年間で7,500件の中古戸建を取得して運営管理していく計画である。


ヒト・カネが揃ったら、あとはモノである物件情報である。ヤモリは自社で地図と連動したポータル機能を開発して、地場の不動産会社から物件情報を集めている。また、これまで会員生徒で実施してきた賃貸需要ヒアリングのデータベースを構築し、AIを活用して賃貸需要のある戸建物件を素早く見極めることを可能とする。

このようにヤモリは、これまでホワイトスペースであった「中古物件X地方」において、ヒト・モノ・カネが揃う仕組みを作って、新しい市場を創ることを目指している。



地方の不動産価値は下がらないのか?

よく聞かれる質問の一つが、「人口減少が進むなか地方や郊外の不動産価値は下がってしまうのではないか?」この質問に対しては、不動産市場をもう一歩深掘りして考える必要がある。地方の中でも生活環境が整っていて、住宅需要が根強い地域は多い。全国の人口20万人以上の62市のなかで、都道府県の人口減少率と比較して人口減少率が低い、または増加した都市は47市ある。


また、地方が持つ観光資源としてのポテンシャルは高く、今後民泊としての空き家活用も進むことが予測される。更に、自動運転技術や情報技術の革新の流れは止まらず、中長期で見れば、都心一極集中から地方移住や複数拠点生活を選択できる人が増えることが予想され、日本の地方エリアの不動産価値は下がるどころか上がるのではないだろうか。


ヤモリが最終的に目指す絵姿

ヤモリが最終的に目指す絵姿は、数万戸の中古戸建を長期運用して、質の高い賃貸物件を供給することである。ヤモリの家庭教師で知識と経験を持った生徒さんと一緒に、全国にある中古・築古物件を再生させて、最後はヤモリが受け皿になって物件を管理し、最後は小口化することで一人でも多くの人の資産に変えていきたい。ここまでできて、ミッションである「不動産の民主化」の実現となる。


ヤモリが存在していることで、一人でも多くの人が不動産によって安定資産を築き、自分らしい日々を送れるようになること、そして住環境の質が改善することで入居者の生活が向上すること。更には、全国地方の中古物件を活性化させることで、環境負荷の少ない持続可能な社会と地方創生を推進していきたい。


 

「不動産の民主化」を進めるスタートアップをやっています

ブログの筆者/藤澤正太郎

東京都出身、2011年に三菱商事株式会社入社。海外インフラ事業の開発プロジェクトに従事。4年間のチリ駐在を経て、不動産関連の新規事業立ち上げ。退社後は米不動産ユニコーン企業であるKnotelの日本代表を務め、2019年11月に株式会社ヤモリを創業。東大IPCの1st ROUNDに採択。三菱UFJ信託銀行などから10億円資金調達をして、日本初となる空き家賃貸ファンド組成へ向けて活動中。


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ヤモリの家庭教師では、サービス開始約2年で会員生徒が購入した中古物件規模は合計50億円を超えて、会員生徒は中古の戸建や一棟アパートをリフォームした後に、貸し出すことで、安定した賃貸収入を得ています。サービスの品質を保つため一人一人に寄り添ってサポートしており、常時入会を制限させていただいております。入会ご希望される場合には、ウェイティングリストにご登録いただきお待ちください。ご登録はヤモリの家庭教師Waiting list申込フォームから。


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